山﨑賢人、実は“魂”で生きる俳優 オススメの傑作“漫画実写化”映画3本を紹介!

 日本で「“漫画の実写化”といえば、誰を思い浮かべる?」と聞かれれば、ほとんどの人がこう答えるでしょう。

 山﨑賢人(あるいは山崎賢人)、と。

 あまりにも漫画実写化の主演が多いことから「ゴリ押し」「もうええわ」「ダメ実写化の申し子」と散々な言われ方をしていましたが、実はかなり良い俳優なんです。“演技力”という点においては、確かに若手でも菅田将暉や成田凌らに劣っているでしょう。

 しかし、彼の魅力はその“役との適応力”“人から気に入られる力”にあります。

 前者は「役と自身のパーソナリティを融合させ、魅力的なキャラクターを創出する力」。そして後者は「一緒に仕事するキャスト・スタッフと心を通わせる力」。後者は撮影現場の空気を良い方に向け、製作スピードとクオリティ向上に寄与するので、これを目当てにキャスティングされることが非常に多いんです。

 今回は、批判にさらされつつも、「山﨑賢人は実はめちゃめちゃ役に適応していて、めちゃめちゃ良い“魂の芝居”をしている」ことがよくあらわれている“近年の出演映画”をご紹介。すでに見た人も、まだ見ていない人も、ぜひご一読いただければと思います。

ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章(2017年公開)

 コアな邦画ファンはご存知、2017年にもっとも炎上した実写化作品です。シリーズ累計発行部数1億部を超える荒木飛呂彦の大ヒットコミック「ジョジョの奇妙な冒険」初の実写映画化。同シリーズ第4部を基にしており、“スタンド”と呼ばれる能力による迫力のバトル、そして人間の“黄金の意志”を称える力強い物語をつむいでいきます。

 山﨑さんは主人公・東方仗助に扮していますが、2016年9月28日に製作が発表されるや、ネット上を中心にえげつない勢いで批判が繰り広げられました。論点は、主に「体格がまったく違う」というものでした。

 まあ、言っていることはわかります。「ジョジョ」シリーズの主人公は、第4部くらいまでは筋骨隆々の大男でした(最近はだいぶ絵柄も変わってきましたが)。細いイメージのある山﨑さんは、だいぶイメージにそぐわないかもしれません。本人もかなり増量に精力を注いでいましたが、残念ながら体格面は物足りなさが残りました(本作クランクイン前に撮影されていた「斉木楠雄のΨ難」現場で、福田雄一監督から「ジョジョのためにもっと食わないといけねえな!」と声をかけられていたそう)。

 しかし、本作の山﨑さんがすごいのは、むしろ“内面のアプローチ”においてです。原作どおりに仗助を演じるのではなく、仗助の性格や治癒能力を持つスタンドの“意味”を拡張し、“街の守護者”という最も重要な要素を強調することに成功したのです。つまり、“黄金の精神”を見事に体現している。原作キャラを心の底から理解し、リスペクトした上でアレンジを加えるという勇気ある決断。“実写化の申し子”たる力量が、この作品にはぎっしり詰まっています。

 私も「ジョジョ」シリーズのファンですが、この映画「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章」、個人的にめちゃめちゃ好きです。そもそも第4部は、シリーズのなかでも異彩を放つ“日常系漫画”でもあり、平穏な日常に介在するスタンドと猟奇殺人犯という“非日常”を描いています。

 三池崇史監督が舵を取った映画は、そんな日常と非日常の往還をサスペンスフルに描き、緊張と弛緩を絶妙に織り成すことで、全編をカタルシスで貫いていきます。確かにラストシーン付近に問題はありますが、観客の心を縛る緊張感張り詰めた空気は本物。自信をもって言いますが、妙な先入観のせいで未鑑賞の人はもったいないです。

斉木楠雄のΨ難(2017年公開)

 「週刊少年ジャンプ」連載でテレビアニメ化もされた人気漫画を、「勇者ヨシヒコ」シリーズや「銀魂」を手がけた福田雄一監督のメガホンにより実写映画化。本作の山﨑さんの特筆すべき点は、“表情の力”です。公開当時はコメディアンっぷりが称賛されていましたが、言葉以上にすごいことをやっているんです。

 本作で要求される演技は、大きくわけて2つあります。ひとつは、徹底的に冷静で無表情の“現実の斉木楠雄”。もうひとつは、徹底的に愚かで変顔を連発する“照橋さんによる妄想の斉木楠雄”です。この演じわけ、見た目以上にかなり難しい

 前者について。“無表情”と一口に言ってもかなり難しくて、場面ごとに同じ“無表情”をしなければいけないわけです。映画製作の現場は、ちょっと撮影しては、カメラ準備のための長い休憩に入り、またちょっと撮影しては休憩に入る、というサイクルです。つまり数時間のインターバルを何度も何度もおいて、何度も何度も全く同じ表情をしなければならない。このことがどれだけ難しいことか…。試してみるとわかるんですが、写真で表情を記録していたとしても、まるでできない。

 でも、本作の山﨑さんはそれができている。どのシーンでもコピー&ペーストしたかのような“無”が顔面に張り付いている。そんな“判を押したような無表情”が完璧にできているからこそ、“照橋さんによる妄想の斉木楠雄”が活きてきます。ギャップが最大化され、めちゃめちゃ笑える状況が作り上げられるのです。

 しかも妄想時の顔も仕草も、めちゃくちゃフルスロットルでぶん回しているから、なんと言うか山﨑賢人の底知れなさみたいなものが垣間見えます。細かい部分に目を向ければ向けるほど、いい役者だなあと思うわけです。

キングダム(2019年公開)

 中国春秋戦国時代を舞台にした原泰久のベストセラー漫画を実写映画化。2019年の実写邦画ではNo.1となる興行収入約55億円(6月25日時点)を記録し、名実ともに山﨑さんの代表作となりました。

 今作の山﨑さんは、アクションにとにかく“気持ち”がのっていました。朱凶に振り下ろしたあの剣戟は、信の思いの全てを理解していないと不可能。一世一代のハマり役。映画.comのインタビューで「生まれ変わり」とまで言われていたが、まさにその通りで、精神の一致ぶりは神がかり的。その一挙手一投足に不覚にも涙がこぼれそうになり、諸手を挙げて「良い!」とガッツポーズしてしまうほど、出色の出来でした。

 実写化作品限定の日本アカデミー賞があれば、主演男優賞は確実。あればの話だけど。製作会見で高嶋政宏が、目を血走らせて「キャスト全員、震えるほどの再現度」と言っていたことに嘘偽りはない。本当に震えるほどの再現度でした。さらに詳しくは、ロングレビューを書いていますので、こちらをご覧ください。

おまけ「麒麟の翼 劇場版・新参者」(2012年公開)

 本作で菅田将暉さんと共演。これをきっかけにめちゃくちゃ仲良くなり、現在までその深い親交が続いているとのこと。そんな視点で本作を見ると、また違った“エモさ”がにじんできますね。再共演は、いつ、どんな作品になるのか楽しみです。

山﨑賢人プロフィール

1994年9月7日生まれ。2009年~11年、ティーン向けファッション誌「ピチレモン」でメンズモデルを務める。10年から俳優としても活動し、TVドラマ「熱海の捜査官」(10)などに出演し、翌11年、橋本愛とともに主演した「管制塔」で映画デビュー。「麒麟の翼 劇場版・新参者」(11)などを経て、ホラー映画「Another アナザー」(12)で再び橋本と主演を務めた。以降、映画「今日、恋をはじめます」(12)や「ジンクス!!!」(13)、TVドラマ「黒の女教師」(12)などに出演し、渡辺あゆの人気少女漫画を実写映画化した「L・DK」(14)では剛力彩芽とともに主演を務め、“壁ドン”ブームの火付け役となる。15年にはHNK連続テレビ小説「まれ」で土屋太凰演じるヒロインの夫役に起用されたほか、人気コミックを実写ドラマ化した「デスノート」で名探偵L役を演じるなど話題作で活躍し、映画でも「ヒロイン失格」(15)や「orange オレンジ」(15)、「オオカミ少年と黒王子」(16)、「四月は君の嘘」(16)と人気少女漫画の実写映画化での主演が相次ぐ。

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