【ネタバレなし感想】実写「キングダム」に「スター・ウォーズ」の面影 “実写化ブーム”を終わらせる完璧な1本

 実写「キングダム」レビュー、長くなったので2本目です。衣装や美術のすごさ、脚本の良さ、キャストのすさまじい熱演、長澤まさみと橋本じゅんの妖怪的存在感を語る前編はこちらです↓

・漂う「スター・ウォーズ」感、見据える“サーガ化”への道筋

 今作を見ていて随所に感じるものがあった。それは、どことなく漂う「スター・ウォーズ」感だ。宇宙でもない、ライトセーバーも出てこない、だけどなんだか「スター・ウォーズ」っぽい。なぜか。場面転換が「ワイプ」であることに気がついた。

 それでこう思った。「キングダム」を「スター・ウォーズ」だと解釈し、再構築しているのか。佐藤信介監督が本作についてたびたび語る「誰も見たことがない面白さ」とは、このことだったのか。そう考えるといろいろと合点がいく。

 物語はほぼ原作をなぞっているだけなのに、なんだか、初めて鑑賞するオリジナル作品の匂いを感じた。それは「スター・ウォーズ」の面影に依るところが大きい。信はルーク、政はレイア、貂はさしずめハン・ソロか。王騎はダースベイダーなのか、オビ=ワンなのか。中国大陸の荒野はタトゥイーンの砂漠に、王宮への突撃はさながらデス・スターへの決死の潜入に見えてくる。原作とはまた別の感覚。知り尽くしていたと思っていた土地に、新たな未知の遺跡が発見されたような気分になる

 これが非常に興味深く、気がついた瞬間、ものすごく嬉しくなってしまった。製作陣は本気で「キングダム」を、「スター・ウォーズ」のような一大サーガに仕立て上げようとしている。ここ日本で。その偉業への挑戦は、久しく日本映画界に灯らなかった炎である。単なる“漫画の実写化”だけに終わらず、この先の希望を感じさせてくれる作品は稀だ。だから、本作にいたく感化されるのだと思う。

・漫画実写化ブームの“迷走”を終わらせる完璧な1本

 またこの映画を見ていて“実写化”の問題点と改善策がある程度わかったように思えた。前編で語ったように、脚本を複数の視点でチェックする構造と期間を準備する。美術・衣装に金をつぎ込む。するとキャストの芝居にも魂がこもりやすい。全体のクオリティが上がる。これが最重要のサイクルだったのだ。

 2016~17年は、実写化不可能の漫画が多く実写映画化されるという、漫画ファンにとっては地獄のような年月だった。なかでも「ジョジョの奇妙な冒険」「鋼の錬金術師」「BLEACH」は、厳しいことをいえば失敗の部類に入る。個人的に実写「ジョジョ」はめちゃめちゃ好きだが、興行面では芳しくない結果となってしまった。「鋼の錬金術師」は愛なき実写化の代表格みたいな出来で、「BLEACH」はアクションとMIYAVIの異常な存在感以外は見るべきところが皆無の悲劇的作品だった。これらは全て「CG技術の発達で実写化が可能になった」ものであり、なぜそこまでイケてる作品にならなかったかと言うと、単純に仕上がりが観客の期待値を下回ったからだろう。

 観客が見たいものをは提示することができなかった。それ以上でもそれ以下でもない。上記作品の興行的不満足から勘案すると、これまで重要と考えられていた「CG」と「人気キャスト」は、実は作品クオリティにあまり寄与していなかったと考えることが出来る。

 「キングダム」は最も貢献する要素は脚本・美術・衣装であることを提示し、かつ「ここまでやらないとダメ」という一発で回答しているように思えた。小手先ではつくることができないと白日のもとにさらし、「キングダム」並みのクオリティを見せるか、あるいは先にヒットした「翔んで埼玉」並みにばかばかしく突き抜けるかどちらかでしか、実写化は成功しないということを証明してみせた。

 思えば「ジョジョ」などのころは、どう立ち回るのが最適解なのか、業界全体が手探りだったように思える。それらの失敗を踏まえ、「キングダム」「翔んで埼玉」が最適解を導き出した。今後、実写化は「キングダム的なもの」(美術・脚本面の圧倒的作りこみ)か、「翔んで埼玉的なもの」(突き抜けた圧倒的な馬鹿ばかしさ)のどちらかに分類されていくのではないだろうか。その意味で、「キングダム」は“実写化ブームの迷走”を終わらせた1本でもある。漫画実写化の新たな可能性を提示してくれる偉大な一歩で、極端にいうと「キングダム」前、「キングダム」後で語られるようになるかもしれない。ちなみに「銀魂」は、どちらかというと「翔んで埼玉的なもの」に含まれると思う。

 繰り返しになるが、本作は、漫画実写化の新たな可能性を提示してくれた。劇中の信は、たびたび“夢”について大声を張り上げる。本作が多くの映画人の夢を乗せ、ひとつの時代を切り開いてくれることを願っている。