社会現象的大ヒット間違いなし! 2019年公開の“見るべき映画”【3月編】

 2019年も早くも2カ月が経過しました。

 早すぎません?

 ついこの前、「笑ってはいけない」を見て、「笑神様は突然に」で千鳥の「韓国の土下座」を見た気がするんですが……。

 1月、2月と大ヒット間違いなしの映画を紹介してきましたが、今回も私、オビ・カタールが独断で選んだ、社会現象的ヒットの可能性が高い3月公開作をご紹介します! 

「岬の兄妹」(3月1日)

 ポン・ジュノ監督作品や山下敦弘監督作品などで助監督を務めた、片山慎三の初長編監督作。ある港町で自閉症の妹・真理子とふたり暮らしをしている良夫は、仕事を解雇されて生活に困り、真理子に売春をさせて生計を立てようと考えつきます。金銭のため男に妹の体を斡旋する行為に罪の意識を感じながらも、これまで知ることがなかった妹の本当の喜びや悲しみに触れることで、複雑な心境にいたりますが、そんななか、妹の心と体には少しずつ変化が起き始めていきます。

 物語は非常に重く、家族で仲良く見られるものではありません。しかし、それにも関わらず、全編にはどこか爽やかさが漂っており、胸には清涼感のある風が吹き抜けていく感覚すらあります。それは、主演の松浦祐也さんと和田光沙さんの演技、片山慎三監督の演出によるところが大きいでしょう。現実の厳しさを突きつけるのではなく、それはそれとして、社会に接続されない自分たちを「こんな感じです」と笑い飛ばしてしまうような、そんな強さがある。トークショーで和田さんが登場したのを見ましたが、映画とはまっっっっったく別人だったので普通にビビりました。女優さんって、やっぱりすごい。

 インディーズ映画ですが、その物語の強度と完成度から、多くの映画人が人生が変わるほどの衝撃を受けています。「こんなものを作られたら、たまらない」という声すら聞こえてくるくらいです。「カメラを止めるな!」の次の社会現象的ヒットを飛ばす作品は、この「岬の兄妹」で間違いない、という評価も非常に多いです。映画ファンならば、まず見ておかなければならない一本です。

「グリーンブック」(3月1日公開)

 第91回アカデミー賞では5部門にノミネートされた感動作。トロント国際映画祭では、ある作品の代打として急遽上映され、最高賞に当たる観客賞を獲得したことから、今年の賞レースの“ダークホース的存在”と話題を呼んでいました。

 人種差別が色濃く残る1960年代のアメリカ南部を舞台に、黒人ジャズピアニストとイタリア系白人運転手の2人が、旅を続けるなかで友情を深めていく姿を、実話をもとに描いています。

 一言で言うと、逆「最強のふたり」です。あっちは障がいを負う富豪の白人と、学のない貧困層の黒人でしたが、こっちは教養がめちゃめちゃある黒人と、野蛮な白人という構造。この逆転が非常に良く、さまざまなテーマがまるで組紐のように絡み合い、カラフルで感動的なタペストリーを織りなしていきます。

 「ワンダー 君は太陽」のようなあたたかさがあり、胸がつぶれるような思いをさせる悪党は一切出てきません。「良い話だなあ…」と思いっきり感動できる一方で、ベタベタっとした湿っぽい演出がない点も、ポイントが高いです。「メリーに首ったけ」などコメディで腕をふるったピーター・ファレリー監督らしく、シニカルな乾いた笑いが随所に挿入されていることも、作品の良いアクセントになっています。

 テーマも今日性があり、多様性あふれる社会を維持・強化・発展させるための重要なメッセージがふんだんに含まれています。アカデミー賞の作品賞をとる可能性も高く、公開時期は非常にいいタイミング。イチオシの作品です。

「アンフレンデッド ダークウェブ」(3月1日)

 全編パソコンの画面上で展開し、SNSを通じた恐怖が襲いかかる姿を描いた新感覚ホラー「アンフレンデッド」の続編。手に入れた中古のパソコンでソーシャルメディアにアクセスしたある男性が、以前の所有者と思われる「Norah」というアカウント名を、自分のアカウントに書き換えログインします。Skypeで友人らと談笑していたある日、PC内に監禁された女性を映した動画など、おぞましいファイルが保存されている隠しフォルダ発見。その瞬間、見知らぬアカウントから「俺のPCを返せ。さもないとお前たちは死ぬ」というメッセージが届き、恐怖の惨劇が幕を開けます。

 製作は、革新的なホラー映画を次々と世に放つジェイソン・ブラム(「ゲット・アウト」)と、ティムール・ベクマンベトフ(「search サーチ」など)。特にブラムは、ホラー映画界を支配しつつあり、自分が殺される誕生日を繰り返す「ハッピー・デス・デイ」や、一晩だけ殺人を含む全ての犯罪が合法となった島を描く「パージ:エクスペリメント」など、日本での公開待機作も多いです。

 また全編PC上で展開、というと、2018年に「search サーチ」がありましたね。製作陣はほぼ一緒。現代の私たちは、ほとんどの時間をPCやスマホなど何らかの“スクリーン”を見て過ごしています。そんな時代にあって、本作のような構造を“スクリーンライフ映画”といいます。現代を象徴する、今見るべき1本です。

「ウトヤ島、7月22日」(3月8日)

 2011年7月22日にノルウェーで発生し、77人が殺害された無差別銃乱射事件を描いた映画です。

 特徴的なのは、銃撃事件が起こる72分間を、ワンカットで紡いでいる点。主人公の少女が事件に巻き込まれ、次々と若者が犠牲になっていく……。少女が体験する恐怖の72分を、観客も同じように体験するのです。

 余計な音楽やナレーションもないため、まさに「事件現場に放り込まれたような」時間が流れます。鑑賞する最中、あなたは何を思うでしょうか。

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「スパイダーマン スパイダーバース」(3月8日)

 日本人がやたら好きな「スパイダーマン」シリーズにおいても、異色の作品と言えます。時空が歪められたことにより、異なる次元で活躍するスパイダーマンたちが集められた世界を舞台に、主人公の少年マイルスがスパイダーマンとして成長していく姿を描いています。

 「別次元のスパイダーマンって?」となりますが、コミックスではさまざまな並行世界が描かれており、ある作品ではピーター・パーカーは死亡しており、ある作品ではまだ生きていたりします。映画でもサム・ライミ版やアメスパ、ホームカミングなど、設定は共有するものの直接的な関わりがない作品がたくさんあります。

 本作とその原作コミックは、そんなとっちらかった「スパイダーマン」シリーズを、一度まとめちまおうぜ! という試みでもあります。主人公のマイルズ(PS4版にも出てきましたね)が、ピーターの意志を継いで成長していく過程は、激アツすぎてヤバすぎます。

 またアメコミのコマ割りなどを、映画的に変換し、最大限魅力的な手法を開発しよう、という心意気を感じることができます。「漫画的表現を映像で魅力的に」というと、日本では湯浅政明監督によるアニメ「ピンポン」がありました。「スパイダーバース」では、そのさらに上をいく“世界一の映像表現”が十二分に表れています。アカデミー賞の長編アニメーション賞は、おそらくこの作品が圧勝でしょう。

「キャプテン・マーベル」(3月15日)

 マーベルコミックが生んだヒーローが結集する「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」の一作。「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」にはシンボルマークだけ登場したため、4月の大注目作「アベンジャーズ エンドゲーム」への直接的なヒントが隠されているはずなので、見逃すことができない一作です。

 アベンジャーズ結成以前の1990年代を舞台に、過去の記憶を失った女性ヒーロー、キャプテン・マーベルの戦いを描きます。MCUでは初の女性単独主人公ですし、マーベル映画では初めて女性監督となるアンナ・ボーデンが名を連ねていますから、近年存在感を高める“女性による女性のための女性映画”としての価値も高そうです。

 ブリー・ラーソン演じるキャプテン・マーベルは、従来の“強く美しい”というステレオタイプな女性主人公像を打破し、新たなスタンダードは世界の観客に受け入れられるのか? 「エンドゲーム」へのつながりより、実はそっちのほうが興味あります。

そのほか

 そのほか、88歳の巨匠クリント・イーストウッドが命を燃やして製作した「運び屋」、「続・夕陽のガンマン」における伝説的シーンのロケ地の復元に挑む有志たちを追った胸熱ドキュメンタリー「サッドヒルを掘り返せ」(3月8日)や、従来の「トランスフォーマー」シリーズとは異なりロッテン・トマトの評価がバカ高い「バンブルビー」(3月22日)、ディズニー・アニメを鬼才ティム・バートンが実写化した「ダンボ」(3月29日)など、紹介しきれなかった注目作が多数。

花粉から逃れるため、映画館に足を運ぶのもおすすめですよ!